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地底の美術館

モスクワの地下鉄

​『 地底の宮殿 』モスクワの地下鉄  フォトギャラリー

1935年に開業したモスクワの地下鉄のネットワークと輸送力は、東京の地下鉄(東京メトロ+都営線)にほぼ匹敵する世界屈指のレベルです。総営業距離は300km以上、現在、14の路線に200を超える駅を擁しており、一日におよそ700万人が利用しています。

地上の駅舎や地下のプラットホーム、コンコースは、いずれも大変美しいデザインと装飾が施されており(フォトギャラリー参照(↓))、旅行雑誌などに「地下宮殿」とか「地底の美術館」などと形容されるほどの豪華さを誇っています。

かつて、地下鉄の写真撮影は不可とされていた時代もあったのですが、現在、写真撮影は許可されており、ホームやコンコースの写真を撮っても、警備している警察官に制止されることはありません。ただし、動画を撮影する場合には、事前に申請し許可を受ける必要があるそうです。

モスクワ川の下を走る中心部の路線は地下深くに敷設されており、駅や線路が地上から50m以上の深度に位置する区間も少なくありません。このため、地上と地下深くのホームを結ぶ長いエスカレーターは、日本のエスカレーターの約2倍(60m/分:勾配30°)の高速で運転されています。もっとも深い駅「パルク・パビエドゥィ(戦勝公園)」は地下84mの深度にあり、地上から地下のホームまで、長い高速のエスカレーターを数回乗り継いで約3分かかります。(この駅には長さ126m(最長)のエスカレーターがあります。)

運行時刻表は公表されていないのですが、主要な路線では、電車は最短で90秒間隔で運転されており、駅で長時間待たされることはありません。 

また、各駅のプラットホーム上には乗車位置の表示はなく、電車の到着や発車を知らせるアナウンスもありません。常に案内アナウンスが流れ、発車を知らせるブザーが鳴り響く日本の駅とは異なり、ホームはとても静かです。ホームに着いたら、最初にやって来た電車に最寄りのドアから素早く乗り込むイメージです。

発車の際、扉が閉まることを知らせるアナウンスが流れるのは車内だけで、ホーム側には流れません。しかも、扉は突然激しい勢いで閉じるので、挟まれるとかなり痛い思いをすることになると思われます。このためか、駆け込み乗車をする乗客はほとんど見かけません。次の電車を待てばよいということなのでしょう。

現在、ほとんどの路線がワンマン運転となっています。車内に掲示されている路線図には英語も併記されていますが、車内の案内アナウンス(録音)は次に停まる駅名を知らせる英語のフレーズ「The next station is ○○○.」以外は、全てロシア語のみです。行き先確認と自身の安全のため、以下のフレーズだけでも覚えておくとよいでしょう!

 ”Осторожно !  Двери Закрываются.”

 「アスタロージュナ! ドゥベーリ ザクリバーユッツァー」

 「ご注意ください! 扉が閉まります。」

 ”Следущая станция ○○○○.”

 「スレードッシヤ スタンツィア ○○○○.」

 「次の駅は、○○○○です。」​

運賃は乗車距離に関係なく、どこまで行っても乗車1回分ごとに精算されるシステムです。また、乗り換え可能な駅で何度乗り換えても、最終目的駅の出口を出るまでは乗車1回とカウントされます。

乗車券(使い捨て磁気カード)は1回単位(1回券は55ルーブル、2回券は110ルーブル)でも買えますが、Suica と同じようなチャージ式ICカード型回数乗車券「”Троика”(トロイカ)」を選択すれば、購入時にディポジットとして50ルーブル必要ですが、乗車1回当たりの運賃は36ルーブル(約70円)ですから、かなりお得な運賃設定といえるでしょう。(2018年1月現在)

なお、これらの乗車カードは、いずれも地下鉄、トラム(路面電車)、トロリーバス、バスと共通で使用できます。いずれの交通機関も同一運賃で、乗車1回分ずつ精算する分かりやすくシンプルな運賃体系です。

日本の地下鉄とは交通システムとしての考え方が大きく異なりますが、考えてみると、1分半~2分待てば次の電車が来るのなら、時刻表は必要ないでしょうし、電車の到着を告げるアナウンスも、むしろうるさいだけかもしれません。高速で動くエスカレーター上を歩く人は多くない(モスクワの地下鉄のエスカレーターでは、空いているときは関西地方と同じく右側立ち)ですし、発車の際、ドアが突然、激しい勢いで閉まるため、駆け込み乗車もほとんど見かけません。

一見、乱暴でアバウトなようにみえますが、実はすべての要素が合理的・調和的に構成されていることに気づかされます。

このように、モスクワの地下鉄は駅が豪華で美しいだけでなく、低廉な運賃で機能的にも大変優れた市民の足として機能していることを実感しました。モスクワへ行ったら、一度は地下鉄に乗ってみることをお薦めします!

※この稿は、政策研究大学院大学の仮屋崎圭司先生、日比野直彦先生の報告論文「モスクワ地下鉄の高頻度運行管理 」、モスクワ市地下鉄公社の "Annual report 2012"、モスクワ市地下鉄公社のオフィシャル・サイトやRBTH(Russia Beyond the Headlines)の情報誌「ロシアNow」の特集記事を参考とさせていただきました。

​『 地底の美術館 』モスクワの地下鉄  フォトギャラリー
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